石橋静河&池松壮亮 根拠なき”今”を生きる2人が都会の喧騒と葛藤の中で生きる「夜空はいつでも最高密度の青色だ」

映画コラム

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』©2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

不安、葛藤、嫉妬、生きるとは何か

都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。塗った爪の色を、きみの体の内側に探したってみつかりやしない。夜空はいつでも最高密度の青色だ。
きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、誰も愛さない間、きみはきっと世界を嫌いでいい。そしてだからこそ、この星に、恋愛なんてものはない。


詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』より「青色の詩」)

この映画の原作は最果タヒの同名詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」を映画「船を編む」などを監督した石井裕也が監督&脚本を手がけた映画である。

僕は専門学校を卒業後、映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」の公開された2017年に僕も都会に出て一人暮らしを始め、何の身寄りもない都会で、”自分の居場所”を探すのに苦労したことがある。

仕事の為、自分の為とは思っても”寂しい”という感情を押し殺すことは簡単ではない。自分を殺してまで都会で何か成長するのだろうかと疑問を持ちつつ、ただただ生きることに精一杯だった。

主人公の美香と慎二もまた、東京という大都会で自分の居場所を探し人生とは何か、生きるとは何か分からないまま、ただ生きている。

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』©2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

美香は看護師として働く傍らガールズバーでバイトをし、女子寮で一人暮らしをしながらペットのリクガメを飼っている。実は僕の母も看護師で、いつも仕事場での話を聞かされていた。人の死に常に向き合う仕事は決して楽なものではないと。

作中にも亡くなった女性が病室から家族に見守られながら、担架で運び出されるシーンがある。

「大丈夫、すぐ忘れるから」見守る家族か、自分に言い聞かせたのか美香はそう呟く。

慎二は建設現場で荷物を運んだり、休憩中は仕事仲間と昼ご飯を食べたり、ガールズバーの話をしてその日暮らしをしている。ボロアパートに住み、左目はほとんど見えずそれを隠そうと変に明るく振舞ってみたり。

そんな2人に共通するのは根拠のない『嫌な予感』や不安、孤独。

ニュースを見れば、どこかで起きた交通事故、どこかの国では紛争、どこかの町では災害。常に毎日人が死に、苦しんでいる。

「嫌な予感がするよ」「わかる」

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』©2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

人の死は儚くも突然訪れ、どうでもいい奇跡もまた突然訪れる

慎二は建設現場の同僚、智之(松田龍平)、岩下(田中哲二)アンドレス(ポール・マグサリン)と休憩中にガールズバーの話題になり、仕事終わりに行く約束をする。

ガールズバーに入り席に着くと、カウンターでバイトをしていた美香と出会う。智之は美香に連絡先を聞き、デートの約束をする。

ある日の仕事休憩後、いつもの4人は現場に戻ろうと歩いていると突然智之が倒れそのまま亡くなってしまう。

智之の葬儀で再会した、美香と慎二。東京という都会で人々が行き交う中、会話も無く歩く2人。

「俺にできることがあればなんでも言ってくれ」「死ねばいいのに」

普通の人であれば、理解しがたい美香の一言。しかし、皆誰しも人に「死ね」「消えろ」一度は思ったことはあるのではないだろうか。僕は小、中、高校と友達と喧嘩した時、自分の思い通りにならなかった時に口に出したことがある。今思えばその言葉を吐いて自分の感情を抑え、何かに当たりたいという気持ちをこの言葉に変換し使っていたような気がする。

僕も中学校時代に出会った親友とも呼べる友人を突然失った。僕は今24歳だが、若くても死は誰しも平等に突然訪れるものだ。

「俺って変だから」「へぇ、じゃあ私と一緒だ」

皆、自分を普通だと思い生きている中で、誰とも意見が合わないと思ったことは無いだろうか?僕は、常に自分が正解だと思っていた。しかし、都会に出て色んな人と出会い、沢山の意見に触れ自分を客観視する中で自分の考えはおかしいのか、相手がおかしいのか考える頻度が増えたような気がする。美香も慎二もまた都会で人々と出会い、何が正解で何が不正解なのか葛藤の中、息もしにくい世界で生きている。

ある日、慎二は仕事中に腕を怪我をしてしまう。病院で治療を受け、病院の廊下を歩いているとナース姿の美香とまた再会する。

この世界は自分達が思っている以上に繋がっていて、どこかの工場で作られた弁当を建設現場で働く慎二が食べ、同じ弁当を病院で働く美香が食べる。

広いようで狭い世界で僕たちは一体何人の人に出会い、触れ合い、何を思い生きていくのだろう。

そんな東京という927万人が暮らす大都会で、2人はどうでもいい根拠のない“奇跡“で近寄り、離れる。


監督・脚本:石井裕也
原作:最果タヒ(リトルモア刊「夜空はいつでも最高密度の青色だ」)
出演:石橋静河、池松壮亮、ポール・マグサリン、市川実日子、松田龍平、田中哲司
製作:テレビ東京、東京テアトル、ポニーキャニオン、朝日新聞社、リトルモア
配給:東京テアトル、リトルモア
(c)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
公式サイト:http://www.yozora-movie.com/